仁義なきBASARA~相棒~ ※戦国BASARA893パロディ。捏造設定が苦手な方はブラウザバック推奨

「…お主ら、どこの差し金じゃ」
真っ白の眉毛を片方上げて、私と佐助を交互に見やる。
落ち着いたような声色とは裏腹に、額には汗が滲んでいた。
「それを貴様に教える必要はない」
「そーそー。じいさんは質問と自分の命のことだけ考えてれば良いってわけ」
「じゃ、じゃが――」
佐助は顔面蒼白の老人を冷ややかに一瞥すると、俺様ってば異様に気が短いんだよね、と銃を指にかけてくるくると回す。
「おい、やめておけ――」
佐助が本気ではない事などお見通しだったが、あえてそう言った。
「わ、わかった!仕方ない、教えてやる!」
どうやら北条は、佐助を危険な男と判断してくれたらしい。
張り詰めていた空気も少し和らいだようで、私もホッと溜息を吐いた。
「いい判断だ」
「それで?あの中身は?」
「金か、まさか麻薬ではないだろうな?!」
「あ、あの中身は―――」
北条はもったいぶって目をつむると、苦しそうな表情を浮かべて言葉を紡いだ。
「…飴細工じゃ」
「……」
「……」
言っている意味が把握できず、私と佐助は顔を見合わせる。
「じいさん、アンタ―――」
「ほっ、本当じゃ!本当に飴細工なんじゃ!あの中身は、一流の職人に創らせた、飴細工なんじゃ!!」
必死の形相で訴える北条を尻目に、私たちは再度顔を見合わせた。
佐助が本当だと思う?という具合に視線を送って来たので、私は眉根を寄せたまま、首を傾げた。
この必死さは、事実のような気がしないでもないが、組の抗争に飴細工が使われるなんて見たことも聞いたこともない。
「お前はどう思う――」
佐助の意見を聞こうと目を反らした瞬間、北条が一瞬の隙を突いて、胸ポケットから何かを取り出した。
「こいつ――!」
慌てて銃を構えるが、時既に遅く。北条は手にした携帯電話を、まるで印籠のように振りかざし誇らしげに言う。
「馬鹿な奴らじゃ!見ろ!この携帯はわんたっちふぉんじゃ!!今1のボタンに登録された風魔を呼び出したところじゃ!風魔は風のようにここへ来る!そして貴様らなんぞ、一瞬でやられてしまうのがオチじゃ!」
「ひ、卑怯者!」
「どちらが卑怯じゃ!二人がかりでか弱い老人を脅しおって…!スーツケースに飴細工なんて入るわけなかろうに!」
「へー、じゃあ本当は何が入ってたのさ」
感心したように佐助が尋ねれば、北条は調子よく話し続ける。
「そろそろ風魔も来る頃合じゃ。冥土の土産に聞かせてやろう、あれはじゃな――」
(走れ)
北条が最後まで言い終えぬうちに、佐助の瞳がそう訴えた気がした。
考えてる暇はない、既に北条は続けて喋り始めている。
「あれは、リサイタル用のカラオケセットじゃ!」
北条が言い終わる前に、私と佐助は同時に走り出していた。

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