仁義なきBASARA~相棒~ ※戦国BASARA893パロディ。捏造設定が苦手な方はブラウザバック推奨

北条の車が停まったのは、ホテルの駐車場だった。
しかもそこは5つ星として名高いホテルであり、高級ホテルの駐車場はとにかく広かった。
今私たちが車を停めた地点と、北条の車がある地点まではまだ余裕がある。
それでも薄暗い駐車場に慎重に降り立つと、辺りを見渡した。
「プライベートだったら文句ないんだけどね」
小声で軽口を叩く男を尻目に、私は北条の車が停まっている辺りへと近づいていく。
人の気配を感じながら静かに車の陰に隠れると、息を潜めてそちらへ目をやった。
見れば北条氏政と思われる初老の男が、御付のサングラスをかけた長身の男になにやら指示を出している。
サングラスの男は小さく頷くと、大きなスーツケースを両手にぶら下げた。
「ありゃー相当の腕だね」
車の陰に隠れる私のすぐ後ろから声がする。
きつく睨みつけてやるが、男はひるまなかった。
「人呼んで、風魔小太郎。戦国時代の冷徹な忍者が由来らしーよ」
「静かにしろ!向こうに気付かれたらどうする!」
「大丈夫だって。俺様、間合いには結構自信があるんだから」
この距離ならまだギリギリセーフ、と私に意味もなく目配せをすると、
するすると私の前を歩き出した。
「お、おいッ!」
「まだ大丈夫だって」
手招きをして、車2台分ぐらい先で待機する。
短く舌打ちをすると、私も佐助の後を追った。
「これからどうするんだ?」
「とりあえず、盗み聞きして情報収集」
静かに頷いて、聞き耳を立てる。
サングラスの男の声は、全くといっていいほどしなかったが、北条の声は割と聞きやすかった。
「よいか風魔よ!こいつを確実にザビーの元へ届けるのじゃ!こいつが向こうへ渡れば、北条家は安泰じゃ!これでご先祖様への恩返しも出来るというもんじゃ!!!」
北条は、そのままひっくり返るんじゃないかというくらいに仰け反ると、豪快に笑ってみせる。
「あのスーツケース…」
「金か、あるいは麻薬の類か――」
どうやら、北条と風魔は二手に別れるようだ。
風魔が歩き出すのを確認してから、ささやくように問いかけた。
「どちらを追うつもりだ?」
「風魔とドンパチは死んでもごめんだね」
佐助は風魔に向かって舌を出すと、北条氏政の方へ向き直った。
「俺様が囮になるから背後をとれ」
簡潔に指示を出すと、あっという間に北条氏政の前へ躍り出る。
「何奴!!」
北条の甲高い声が、駐車場に響き渡った。
その瞬間、私は素早く奴の背後に回り、背中に銃を突きつける。
「い、一体なんじゃ…!」
「悪いね~銃は捨ててくれる?」
佐助は微笑すると、北条へ銃を向ける。
前後に挟まれて観念したのか、北条は持っていた銃を地面へ捨てた。
そのとき、老人の喉がごくりと鳴るのを聞き逃さなかった。
「さっきの男が持っていったスーツケースはなんだ?」
銃を背中に押し付けながら、低い声でささやく。
北条はそれを聞いた途端、肩を震わせた。

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