仁義なきBASARA~相棒~ ※戦国BASARA893パロディ。捏造設定が苦手な方はブラウザバック推奨

「前見て、前」
彼女の口を手のひらで覆って、車の中だと言うのに小声で呟いた。
見覚えのある白いセダンは、確かに写真で予習しておいた北条の所の車だった。
白い車体が鮮やかに目の前を通り過ぎる。
急いでハンドルを切ると、気づかれないくらいの距離を保ったまま、車の後をつけた。
「…北条のところの車か?」
「そーみたい。出来るだけ怪しまれないように笑って」
自身満面の笑みでそういえば、彼女は面食らいながらも引きつった顔で笑顔を作る。
「俺たちしょっぱなからついてるかも」
「…これからどうするんだ」
「このまま奴さんの後を追う」
「気付かれはしないか?」
「そうね、まぁ向こうもまさか女連れでつけられてるとは夢にも思わないんじゃない?」
ありのままの事実を言っただけなのに、
それを侮蔑と受け取ったのか彼女は眉間を寄せた。
そんな彼女の様子に気づいてはいたけど、気づいていないふりをして、言葉を続けた。
「あと、さっきの続きだけど――」
「……」
「俺たちは下っ端の構成員らしく、指示通りやればいいんだよ」
「…わかっている」
押し殺すように言って、唇を噛む。どうやら彼女も馬鹿ではないらしい。
安堵の溜息を吐いて、一服でもしようと思った
その矢先――。彼女はぽつりと呟いた。
「…お前に、迷惑はかけないつもりだ」
独り言のように言い放たれた言葉に、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
たぶん、こいつは…言っても聞かないタイプだ。絶対に。
同時に旦那の顔が思い起こされて、なんだか同じタイプの人間なんじゃないのと笑いが込み上げてくる。
「…アンタ、面白い奴だね」
「“アンタ”じゃない。“かすが”だ」
仏頂面のかすがを見て、吹き出しそうになるのを必死で堪えながら、強くアクセルを踏んだ。
「じゃあ、行きますか。かすがちゃん?」
かすがの体が前のめりになるのを視界の端で捉えると、
前方を走る北条の車が、太陽の光を浴びてきらりと光った。

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