仁義なきBASARA~相棒~ ※戦国BASARA893パロディ。捏造設定が苦手な方はブラウザバック推奨

女のヤクザなんて、良いもんじゃない。
ヤクザの妻――っていうならまだわかるけど、
女のくせにヤクザになろうなんてどうかしてるとしか思えない。
どうせヤクザになったところで、男の世界に首を突っ込んで散々引っ掻き回した挙句に、窮地に陥ったら、これ見よがしに女の特権ってやつを振りかざすのだろう。
女のヤクザに関して、俺様は正直良いイメージを持っていなかった。
むしろどちらかといえば軽蔑すべき存在で、まさか自分がその相棒として働かなきゃいけない日が来るなんて、夢にも思わなかった。

*

殺風景な事務所の乱雑に置かれたパイプ椅子に、足を投げ出して溜息をつく。
テーブルに置かれたコーヒーはもうすっかり冷めてしまっていた。
「なんで俺様が女なんかと組まなきゃならないんですか」
頬を膨らませて上司の顔を見るが、真田の旦那は俺様になど見向きもせずに
闘志を――まぁ所謂スクワットとか筋トレだけど――燃やしていた。
「武田と上杉という大きな組同士が手を組むなど、今後あるかないかわからないのだぞ?」
興奮した様子でまくし立てると、100回目のスクワットを終える。
「…旦那はさぁ、伊達の若頭とやれるんだから良いだろうけど。俺様は女のおもりはちょっとねぇ」
やや馬鹿にした口調でそう言えば、旦那は眉をひそめた。
「…オナゴと言えども上杉組を取り仕切る立派な幹部と聞いている」
「他に優秀な奴がいなかったんじゃないの?」
「佐助、」
旦那は咎めるように俺様の名を呼ぶと、大きな瞳でこちらを見据える。
「…とにかくお館様の面子をつぶすわけにはいかぬ。今日の任務は遂行次第、きちんと報告せよ」
「はいはい。北条を見張っときゃ良いんでしょ」
「うむ」
別に俺様一人でも良かったんじゃない?と一人ごちれば、旦那はジャケットを翻し、“お前とかすが殿なら上手くやれるはずだ”と言い残して扉に手をかけた。
「あっ、ちょっと待って」
ドアノブを握ったまま、旦那は振り返る。
「なんだ」
「ネクタイ曲がってるよ」
「う、うむ」
いささかネクタイの締め方には慣れていないようで、旦那は慌ててネクタイを右にねじった。
さっきよりさらに曲がったような気がしたが、放っておくことにした。
「これで大丈夫か?」
「オッケー。で、その子。可愛いの?」
「………」
しばらく互いに見詰め合っていたが、突然旦那はふっと笑った。
「…相当な美女と聞いておる」
そのままガチャリとドアが閉まる音がして、俺様はほくそ笑んだ。
女のヤクザは好きではないが、美女なら大歓迎だ。
仕事は最悪一人でやればいい。女の方は自分の愛人にでもしてしまえば良いだろう。
少しやる気が出てきたところで、昼寝でもすることにした。

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