よかったことは
「風の悪魔…」
私は片膝をついた。なんという強さ。さすが伝説の忍だけある。
「はぁっ、はぁ、かすが大丈夫か?」
佐助が息を弾ませる。
私たちは勝った。
あの風魔小太郎に。
「…死んだのか?」
「んー、微妙だね。死んだというよりは、姿を消した。瀕死で逃げ帰ったってとこじゃないの?」
「………」
沈黙。
今は勝ったとはいえ、ヤツは必ず私たちを殺しにくるだろう。今日は二人だったから勝てたが、一人のときに果たしてあいつに勝てるだろうか。
「まぁ、とりあえず勝ったんだし、帰ろうか。立てる?」
佐助が手を伸ばす。
「大丈夫だ」
私はその手を無視して立ち上がる。
「ちえっ」
佐助は小さく舌打ちした。
「それよりさぁー、俺たち息ぴったりだったね。」
「だいたい同じ技なんだから仕方がないだろう」
私はヨロヨロと歩きだす。思ったより消耗が激しい。
「いやそーでなくてさ、ほら、心のさぁ、…まぁいいや、」
そういうと佐助は、黙り込んだ。
「…強かったな」
私からつぶやく。私から話しかけるのがよほど珍しかったのか佐助が驚いた顔でこっちを見る。
「ねー。今度一緒に修行しようか。」
「断る。」
でも、一緒に戦ったのがお前で、よかった。謙信様ならもっとよかったが。
あのお方の次に私と息が合うのは、お前ぐらいだから。
でも絶対に、お礼なんか言ってやらない。
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