クリスマスのありかた

今年のクリスマスイブは平日で、俺もかすがもいつもと変わらない日常を過ごし家路に着いた。 いつも通り今日あったことなど無駄口をたたいて、夕飯どうする?なんて相談をする。
ただ少しだけ違う点は、冷蔵庫の中にある1ホールのケーキ(12月に入ってからネットで予約して冷凍されたものが昨日届いた)とシャンパン…とビールである。
それらが冷蔵庫に確かに入っていることを確認して扉を閉めた。
「せっかくのクリスマスだからイルミネーションでも見に行こうか?」
ピザでも頼もうとチラシを見つめるかすがへ向って呼び掛ける。
「人ごみは嫌いだ」
「すぐ人気のない方に行こうとするもんね」
揶揄するようにそう言えば、かすがはムッとする。
「その言い方はやめろ」
ひやりとした視線を、苦笑して受け流す。 ソファに腰掛けるかすがの隣にさりげなくシャンパンとグラスを持って座った。
「一杯いっとく?」
「いいな」
グラスにシャンパンを注いで乾杯する。 ちん、といい音だけが部屋に響いた。
「もう12月も終わりだねぇ」
「ああ、早いな」
「早すぎて焦るね」
「何をだ」
「…ま、いろいろだよ」
かすがは興味なしと言った感じで、グラスの中のシャンパンをあおる。 まるでビールみたいにのど元からはごくごくと良い音がして、飲み干した後は感嘆のため息が漏れる。
「おいおいビールじゃないんだから」
「うるさい、黙って飲め」
「シャンパンは味わって飲むもんだよ」
「どうせスーパーで300円くらいだろ」
味わうほどうまくもない、と見事に値段を言い当てられ返す言葉もない。 安けりゃがぶのみしていいという構図にもならないが。
「クリスマスプレゼント、なんか欲しいものとかないの?」
「お前には絶対に買えないものだから遠慮しとく」
「何?」
好きな女のためなら懐事情はどうあれ何とかしてあげたいのが男である。
「マンション」
「無理」
「だろうな」
かすがもそう言って苦笑した。 確かに賃貸でなく持家でマンションを買った方が後々お得である。 そろそろ将来を視野に入れて給料アップをお願いする頃合だろうか。 …まだ付き合ってないけど。 そこまで自問自答してから、そう言えば今日はクリスマスイブなんだなぁと改めて思い出す。 一体隣りにいる女はどんな気持ちで俺様と一緒にいるのだろうか。
「ねぇ」
「なんだ?やっぱりオードブルにするか?」
「いや、クリスマスってさ誰と過ごすためにあるか知ってる?」
恐る恐る問いかければ、かすがはきょとんとした顔をしている。
「…それがどうした」
「恋人たちだよ?」
俺たちは?てな具合で自身と彼女を指で指し示した。かすがは案の定顔をしかめる。
「…それは日本だけだろ」
「…ここ日本だけど」
「海外では家族と過ごすんだ」
「…へぇ、そう。」
それはイブ関係ないんじゃないのとも思ったがとりあえず納得したポーズをとる。
でもそう言ってから、どっちがランク的には上なのだろうかとふと考えた。

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