クリスマスショートショート

「ね、笑って?」
テーブルを挟んで向かい側。仏頂面のかすがに向かって声をかける。
かすがはそれに大して、ますます不機嫌そうな表情を浮かべている。
「なんで面白いこともないのに笑わなければいけないんだ」
「笑う角にはなんとやらっていうじゃない」
「…今はそんな気分じゃない」
どうせ折角のクリスマスを、自宅で…しかも俺様と二人きりで過ごすのが気に入らないのだろう。
あのお方に自分から声でもかければよかったのだ。
そしたら俺様は惨めに家で一人だけれど、とにかくかすがが不機嫌なのは見たくない。
「じゃあ一体どんな気分なら笑いたくなるのさ」
かすがは俺様の顔を見つめると首を傾ける。
「…何か面白いことを言え」
「…随分無茶振りじゃないの」
「お前が面白いこと言えば笑う…かもしれない」
真顔でそんなことを言う。
「じゃあ、ベッド。行こうか」
「…………」
「…それのどこが面白いんだ」
半ば呆れ顔の彼女の視線が痛い。
「そんなすぐ面白いこといえたら誰も苦労しないっての」
「つまらん」
「んなこといったって、かすがはどーなのよ」
「何がだ」
「面白いこと、いえるわけ?」
「…言えるさ」
反撃開始とばかりにかすがに詰めよった。
「感心した駄洒落があるんだ」
「駄洒落?」
「ああ」
「…何?」
「…教師が…今日死んだ 」
「…………」
二人で見詰め合う。
「おっ、面白いというかすごくないか?」
そうほんの少し嬉しそうに言う彼女を見て、ああ、毎日仏頂面を見せられてばかりだけど、このたまに見せる顔があめとムチ的な効果をもたらして俺は若干くせになってるんだろうなぁと妙に納得してしまった。

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