月は光と影で出来ている
見晴らしの良い、木の上で
北条の偵察から戻るはずのあいつを待っていた。
時間的にはもう、戻っても良い頃合いだ。
しかし待てど暮らせどあいつは来ない。
もう帰ろっかな。
でもその後にかすがが来たら…
そう思うと、なかなか帰れずにいた。
まさか、
何かあったのか?
一瞬不安に襲われるが、
あいつに限って、それはないと考え直した。
ふと金色の光を感じて、顔を上げる。
今日は、満月か。
まんまるの月から光が降り注ぐ。
でっかいお月さんだな。
しょうがない、今日はお前で我慢しようか。
そう思って、月に魅入った。
*
一体、あいつは何をしているんだ?
北条の偵察から帰る途中、木の上で黄昏れている佐助を見つけた。
あんな見晴らしの良いところで。
あいつは、忍びとしての自覚が足りないみたいだな。
よくよく見ると視線の先には月。
嗚呼、今日は満月か。
あいつはあれを見ているのか。
確かに、ひときわ明るい月。
佐助の横顔を照らす。
つかめない男だ。と思う。
本心を知ろうと、近づけば近づくほど逆に遠ざかってゆく。
いつも傍にいるくせに、深くは踏み込んでこない。
存在するのにつかめない。
まるで影のようだ。
私は月。お前は影。そしてあのお方は太陽。
光に惹かれるのは、私もお前も同じなのだな。
そう思って自嘲的に笑う。
佐助の斜め後ろから、
同じように月に魅入った。
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