七夕

七月七日の七夕に向けて、俺たちは短冊に願いを込める。
平安時代から続いたというこの慣わしに思いを馳せながら小さな紙切れに願い事を書いた。
「“世界平和”だと?お前、本気で思ってるのか?」
かすがが俺様の短冊を覗き込んで呆れたように言う。
「俺様はいつだって本気だって」
真面目な顔して言った。うそだけど。

本当の願い事なんか書けるわけない。
もちろん色々考えたけどね。
かすがと今年こそは…
いや、かすがが俺様のこと…
頭の中でもやもやと湧き上がる願い事候補。
でも、そんな滑稽な願い事を短冊に書くのは気が引けた。
だから格好つけて『世界平和』にしたんだよね。
「かすがこそなんて書いたの?」
今度は俺様がかすがの短冊を覗き込む。
そこにはかすがの字で『地球温暖化阻止』って書いてあって。
思わず吹き出した。
「ちょっ、かすがこそ、スケール大きすぎない?」
かすがらしいなとも思いつつ、本当の願い事を書いてないなと直感した。
俺たちは似てるから。
お前も格好つけたんだろ?
それから黙って、二人で笹に短冊をつけた。
「本当は何をお願いしたの?」
「…教えない。お前は?」
「…内緒」
「そうか」
二人の短冊が風に揺れて翻った。
空には満天の星。

俺たち二人の願いが叶いますように。
天の川に祈った。

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