宝探し

俺様がやっとの思いで手に入れた、魔王が家族のために残したとかいう 埋蔵金の在処を示した地図。 黄色く変色し読むのもやっとだというその地図には、 簡略化されたこの辺りの道とお宝の在処が×印で描かれている。
「…本当に此処にあるんだろうな」
俺様の相棒は、ここぞとばかりに眉根を寄せ 訝しげな視線を送って来る。 正味な話し、俺様にそんなこと分かるわけない。 だいたいあの魔王が、家族のために埋蔵金を残したという 話からして確かではないし、この地図は偽物である可能性の方が高い。 真意を確かめるためにここへ来たというのに、 俺様の相棒は随分と鼻息が荒いようだ。
「まぁ、あったらラッキーなんじゃない?」
地図に目を落としながら本音を漏らす。
「そんなあやふやでは謙信様に良いご報告が出来ないだろう!」
「そんな事言ったってさぁ、この地図本物だか分かんないし、だいたいこの地図簡略化され過ぎてて分かりにくいったら…」
「ええい、もう良い!私に貸せ!」
かすがはそう叫ぶと、俺様から地図をひったくる。 彼女は地図を見るなり眉間の皺を、さらに深くした。
「この辺りが春日山だとして…、ここが神社だから…」
何やらブツブツと呟いたかと思えば、 地図をひっくり返してみたり、傾けたりし始めた。 その光景があんまり滑稽だったもので、俺様はつい吹き出してしまう。
「ね、それ、何してんの?」
「何って、地図を読んでいる」
「読んでる…って、地図は逆さまにしても変わらないでしょ」
「う、うるさい、こうした方が見やすいんだ!」
顔をゆでダコのように真っ赤にしてそう喚くと、 かすがは再び地図を逆さまにしたり自分の頭を傾けたりし始めた。
「ね、地図の場所、わかった?」
「……しばらく私に話しかけるな」
緩みっぱなしの顔をかすがに見られないよう、 はいはいと返事をしてその場に座り込んだ。 彼女の地図解読が夕方までに終われば良いけど。

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