修羅の合間に※アニメネタ

こうして甚大な被害を出しながら織田包囲網は失敗に終わり、 伊達・上杉・徳川それぞれの傷ついた兵士たちは続々と武田へと運ばれて行った。 もちろん真田隊を中心に全武将総出で救出作業は行われていた。
「おい、佐助!ちょっと手伝え」
道場の入り口で、かすがに呼び止められ振り返れば、 彼女の両肩には兵士が二人もたれるように寄りかかっていた。 かすがから一人を受け取ると、道場の床にそっと寝かす。 さらにもう一人を隣に寝かせると、救護班を呼びつけて手当を頼んだ。
「お疲れさん、これで終いかな」
「そうだな、だいたい運び込んだろう」
かすがはふぅと溜め息をもらすと、額の汗をぬぐう。 何気なくかすがの手元をみれば、指先が真っ赤だった。 よくよく見ると、胸元や頬も赤黒く汚れている。
「うわ、すげー血」
「…全部返り血だ」
「おっかない女だねぇ」
ひゅう、とからかいの口笛を鳴らせば、かすがは眉間に皺を寄せる。 お前に言われたくはないと吐き捨てるように言って、俺様の胸元を指差した。 見れば、こちらも血で真っ赤だった。
「あらら」
かすがはフンと鼻を鳴らすと、踵を返して道場から 出て行こうとする。
「おい、どこ行くんだよ」
「お前には関係ない」
「…ふーん。その姿のままで謙信様の前に行こうってわけ?」
そんな顔をしていればどこへ行くかなんて一目瞭然だ。 かすがは口をつぐんで自分の胸元を見やると、悔しそうに唇を噛んだ。 さすがに血まみれで主の元へ行くのは気が引けるのだろう。
「とりあえず、着替えなきゃじゃないの?」
「着替えなんて持っているはずないだろう」
「俺様に素晴らしい考えがあるよ」
「…なんだ」
「俺様の服を着る」
せっかく親切で言ってやってるのに、 かすがは今までで一番じゃないかというくらい眉間の皺を深くすると 絶対にごめんだと冷ややかな視線を送って来た。
「冗談だって。俺様着る服なくなっちゃう。こっちでちゃんとしたの用意するよ」
にっこりと微笑めば、かすがは訝しげに俺様の顔を覗き見る。
「…何を企んでいる」
「嫌だなぁ、この緊急時に。俺様にやましいことなんてあるわけないでしょーが」
「お前は存在自体がやましい」
俺様は苦笑して、やれやれと肩をすくめてみせると じゃ、行こうか、とかすがを促した。
「どっ、どこへ行くんだ!?」
「どこって着替えにだけど?」
「何でお前も来るんだ!」
「だって着替え手伝わないと。いや変な意味じゃなくてさ、ほらその服、脱ぎにくそうだし」
ていうかどうやって脱ぐの?その服、と問いかけた所に かすがの鉄拳が俺様の顔面に飛んで来た。

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