勝負の行方

へっくし、へっくし…!
あー、くしゃみが止らない。
夏風邪でもひいたかね。
鼻水をすすりながら慣れた手つきでぞうきんを絞る。
いつものように掃除をしていたら、廊下に黒い布が落ちていた。
(………?)
一瞬ためらわれたが、それを手に取って広げる。
黒のTバックだった。(レース付)
ちょ、
これ、
まさか、
ねぇ?
黒のTバックを穴が空くぐらいに見つめた。
いくらなんでも過激すぎる。
かすがの勝負下着はてっきり赤だとばかり思っていたが。
まさか黒とは。
思わず脳裏に黒の下着姿のかすがが映し出された。
ご丁寧にガーターまで履いて。
「ないないないない!」
あわてて妄想を振り払って頭を掻きむしった。
大きく深呼吸をして呼吸を整える。
下着ごときで何を動揺しているんだ俺様は…!
とりあえず、見なかったことにしよう。
これを拾ったことがかすがにバレなければいい。
そう思って下着を握りしめた。
感触が妙に生々しい。
下着ならこんなにも簡単に手に入るのに。
虚しい。
元のあった場所へ戻しておこう。
でも、この場合部屋に戻しておいたほうが良いかな?
ふとそんな考えが頭をよぎった。
かすがのことだから部屋に戻る途中で落としたのだろう。
だったら部屋に戻したほうが親切というものだ。
そんな風に思ってかすがの部屋の前へ立った。
ドアノブに手をかける。
あ、またくしゃみが出そうだ、
は、は、くしゅっ!
思わず持っていた下着を口元に当てる。
と同時に玄関のノブが回転して、扉が開いた。
かすがが目の前に立っている。
「…何をしている」

俺様の夏が終わった。

Since 20080422 koibiyori