佐助とかすがと半部衛と

「かすがに何の用?」
目の前の男はにっこりと形の良い唇で弧を描く。
しかしその笑顔とは対照的に瞳の奥は敵意むき出しといったところか。
実に営業スマイルがうまい男だ。なんとなく感心して男を見ているとしびれを切らしたのかさらに言葉を並べる。
「アンタ、名前は?」
「名乗る程のものじゃないよ」
僕が柔らかく笑うと、それが意外だったのか彼は面食らったような顔を浮かべている。
「かすがとはどういうつながり?」
「高校の時に生徒会でちょっとね」
「…アンタ生徒会副会長だろ?竹中半兵衛。天才軍師さん」
彼は最初から僕のことを知っていたのだろう。どういう意図があるのかまではわからないけどずいぶん回りくどいやり方だ。
「君は相変わらず食えないね」
「アンタもね」
「で、卒業してから連絡なんて取り合ってもいなかったのに一体どういう風の吹き回し?」
彼は訝しげに僕を見つめると玄関口を遮るように陣取る。
「君はそれが一番気になるみたいだね」
「…気になるっていうか事実関係――、アンタの意図を知りたいだけだって」
「ふうん?もし僕が彼女を好きだと言ったらどうする?」
「断固阻止する」
「じゃあ彼女が僕を好きだと言ったら?」
「……」
彼は考えているのか少し間を空けてから応援する、と蚊の鳴くような声で言った。
「それが君の悪い癖だね」
僕がそう言い終えないうちに、廊下からばたばたと走る音が聞こえて来た。彼も僕も同時にそちらへ目をやるとすごい剣幕で彼女が捲し立てる。
「佐助!何をしている!」
「何ってやーね」
「やぁ、姫君にお届けものを持って来たよ」
彼の顔がとてつもなく歪むのを視界に入れながら僕は微笑んだ。
「すまない、半兵衛。この男が何か無礼な真似をしなかったか?」
「大丈夫。嫌みは言われたけどね」
満面の笑みで微笑むと、彼女は彼を睨みつける。彼は作り笑顔で肩を竦めるとその後すぐに僕を睨みつける。(とても面白い)非常に興味深いこの二人をしばらく見ていても飽きないだろうなとぼんやり考えながら彼女にお届けものを手渡した。
「じゃあ邪魔しちゃ悪いから僕は帰るよ」
「あっ、おい半部衛!」
彼女に呼び止められるのも構わずに玄関の扉を開けて閉口一番、佐助くんに向かって言う。
「いいかい?ナイトは姫を守る事が出来るけど結ばれることは滅多にない」
「姫と結ばれたいのならまず王子にならなきゃ」
二人に向かってウィンクをすると静かに扉を閉めた。
「どうしたんだ…半兵衛は…」
「かすが、絶対にあいつと付き合っちゃ駄目だよ」
「お前に言われる筋合いはない」

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