忍失格

恋なんて、忍びにとって御法度。
そんなことは嫌というほど分かっていた。
(あーあ。俺様もとうとうツケが回ってきたのかね)
まさか自分が、これほどまで感情豊かだとは思わなかった。
嫉妬、羨望、憧憬、恋焦…。
なかったはずの心の中に、
チリチリとした感情が生まれてくる。

今まで、かすがを見て、
「感情的すぎる」
「忍びに向いてない」
なーんて言ってきたけど。
俺様も人のことを言えないわけで。
こんな感情が生まれたのも、 はっきりいってアイツのせいなんだよね。
恋は人を弱くする。
ほんとにね。 こんな感情は、お荷物だ。
仕事に差し支える。
冷静な判断を狂わせる。
嗚呼嫌だ。
こんな自分見つけたくもなかった。
ドロドロとした汚い感情に呑まれそうになる。
これだから嫌なんだ。
自身でコントロールが出来なくなる。

………………

大丈夫。
顔をパチンと叩いて思い直す。
大丈夫。

これは 「恋」
なんかじゃない。
ただのおせっかいさ。
忍び失格のあいつに、俺様が心配してるだけだ。
俺様の母性ってやつが反応しているだけだ。
そう。そうだって。 俺様は忍び失格なんかじゃない。
「恋」
なんて、 俺様は知らない。

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