湿り気愛

休日出勤もようやく終わり、やっとのことで家に帰ると中は空っぽだった。
それもそのはず、かすがは今日高校時代の友人と飲み会があるらしく
珍しく家のことはやっておくからと朝言っていた。
掃除機をかけたのか廊下は綺麗だ。玄関の靴も丁寧に並べられ、なんだやれば出来るじゃないのと思わず笑みが零れ落ちる。
リビングに入りソファに倒れこむと、テーブルの上には書置きがあった。
『夕飯残り物で適当に作った。冷蔵庫をミロ』
わぉまるで新婚みたいじゃんと胸弾み、冷蔵庫の中を覗き見ればキンキンに冷えたビールと枝前がひとつ。
他には何も無い。
「おいおいそれは作ったのうちに入らないって…」
ひとりごちてがっくりと肩を落とすと、時間も時間だ。
もう飯を作るのも食べるのもめんどくさくなって寝る事に決めた。どうせ明日は日曜だし。
スーツをソファに投げ捨てると、パンツ一枚のまま自室に戻りいざベッドにダイブ―――
しかしベッドにはシーツがひいてなかった。
あれ、洗ったのかな?とリビングに戻ると、ソファの上に今日洗ったと思われる洗濯物がきちんと畳まれている。しかしシーツらしきものは無かった。
一体俺様のシーツはどこに行っちゃったのさ?
キョロキョロと辺りを見渡すと、ベランダの脇に丸まったくちゃくちゃの白い塊。
まさかと思いつつそれを広げると…、俺様のシーツでした。
きっと取り込んでそのまま忘れたんだな、と溜息を吐くと丸まったシーツを
抱え自室に戻る。
大きく広げ手際よくシーツを装着すると、やっとベッドにダイブした。
んーー、太陽の匂い!とうつぶせでシーツの匂いをかぐと、なんだか足のあたりがひんやりとする。
不思議に思い体を起こすと、その部分を手で触ってみた。
湿っている。

…確かに今日は夕方くらいにお天気雨が降ったけども。
たぶん夕方まで干しっぱなしにしといて慌てて取り込んだな…
全体をくまなく触ると、乾いているところと湿っているところが半々だった。
全く。
かすがらしいやと苦笑してそのままゴロゴロと寝返りを打つ。
まぁ今日は暑いし、ひんやりして丁度いいかもと自分に言い聞かせ静かに目を瞑った。

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