佐助とアニキ

「人は幸せになるために生まれてきた、だなんて、幸せなやつが言う台詞だよね」
ヘラヘラと、冗談めいた口調の癖に、妙に冷めたことを言う。猿飛佐助は、この俺、長曾我部元親様の貸してやったCDに文句をつけながら、それを手渡した。
「おいおい。貸してやったっていうのにひでぇ言い草だな、しかも冷めたこと言いやがって、夢のねぇやつだ」
俺は奴を一瞥すると、はき捨てるように言った。
「俺様は、冷たいんじゃなくて、現実的なの」
夕日のような朱い髪が揺れる。肩をすくめながら、やけにはっきりとした口調で言う。
「現実的ねぇ…」
俺は腕を組んで考えた。
…っつーことは何か?俺が夢見がちだってか?
「男は、ロマンだろ?」
思わず口に出すと、猿飛はお得意の人を馬鹿にしたような感じで「はいはい」とだけ返す。
妙にそれが悔しくて、嫌味を言った。
「お前のロマンはどうなってんだよ」
「……。どうもこうも、全戦全敗」
「お前、ストーカーっぽいんだよなぁ、待ち伏せしたりよぉ」
「す、ストーカー?!ちょ、ちょっと、一途って言って欲しいね!」
さすがにストーカーは堪えたのか、猿飛の顔に、動揺の色が浮かんだ。ホントはお前のほうがロマンチストのくせしやがって。今度は俺が馬鹿にしたように「はいはい」とつぶやいた。

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