女の悩み

体重計の前で、大きな溜息をついた。
さっきから乗っては降り、乗っては降り、をひたすら繰り返す。
(あぁ、なんてことだ)
確かに社会人になってから、運動不足だと感じていた。佐助をしばくにしても運動にもならないし、仕事はデスクワークだし、休日だってあまり出掛けないで家でゴロゴロしているし。
だからこの結果は仕方のないことだ。

もう一度大きく溜息をついて体重計から降りる。と同時に佐助が洗面所へ入ってきた。慌てて体重計から飛び降りる。
「あら、こんなところで何してんの?」
沢山の洗濯物を抱え、私を一瞥する。
「な、なんでもない」
平静を装い、洗面所を後にしようと踵を返す。
「あ、もしかして体重計?」
佐助は洗濯物を洗濯機に放り込むと、ギクリと立ち止まる私を横目に体重計に乗った。
「あっちゃー、やっぱり落ちてる。俺様、夏はなんか知らないけど体重減っちゃうんだよね」
佐助は小さく溜息をつくと、私を見た。
「…ほう」
「ほんと、もともと華奢な方なのに困っちゃうよね」
「…それで?」
「いやだからさ、もっと精のつくもの食べないと――って、もしかしてかすが、太ってた?」
「………」
答えない私を見て、肯定と判断したのだろう。佐助は笑顔を歪ませると私の体を上から下まで舐めるように見た。
「何キロだったの?」
ニヤニヤと意地の悪い顔でまくしたてるように言う。
「45?50?55?…まさか、60?」
「なーんてね」
佐助はヘラヘラと笑って洗濯機の方へ体を向きなおすとスイッチを入れた。
私はそれを確認して後ろから思いっきり佐助のケツ目掛けて蹴りを入れた。

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