ミイラとり(学園bsr)

学校の帰りは、家の方向が同じだからと難癖をつけて一緒に帰るのが定着化していた。
今日は試験だったこともあり、私と佐助はいつもより早い時間に電車に乗り込んだ。
「だめだってばぁ、こんなところで…」
「大丈夫だよ、誰も見てないって」
チッ、
心の中で大きく舌打ちをする。昼間からお盛んな奴らだ。
大きく揺れる車内の中で、カップルが暑苦しいくらいにひっついている。

乗車口に陣取っているので、他の乗客はひどく迷惑そうだ。
自分から反対側の乗車口にいる熱々カップルを思いっきり睨みつけると、視線を窓の外へと移した。
(全く、迷惑な奴らだ)
小さく溜め息をついて、何気なく佐助を見る。
佐助は乗車口の扉に背をもたれ、寄りかかっていた。
視線の先には先程のカップル。
目を反らすことなく、じっと見つめている。
私はカップルを見つめる佐助を見ていた。
こいつは、故意にやっているのか、それともただ単に黄昏れているのか…。
佐助の視線に気づいたのか、カップルは少し気まずそうだ。
たまりかねて、佐助の顔を強制的にこちらへ向けた。
「おいっ、あんまり見ているんじゃない!」
小声で注意すると、佐助は一瞬驚いた表情を浮かべたが、
すぐにいつものふてぶてしい顔で笑う。
「あーゆーのはさぁ、見て欲しいんだよ」
ニヤニヤと意地の悪い笑みで私に目配せをする。
何が楽しいのか何とも生き生きとしている。
「しかし…」
私が躊躇うと、佐助は私の方へにじり寄ってきた。
「何を」
「えへへー、俺たちもやってみようか」
間合いはますます詰まっていく。
「ふざけるなっ、こんなところで…」
「大丈夫だよ、誰も見てやしないって」
気がつけば熱々カップルは既に下車していて、周りの乗客の冷ややかな視線が私たちを包んでいた。

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