公開記念日

湿度120%超えてるんじゃないの?と思わずぼやきたくなる真っ昼間。
さんさんと照り付ける紫外線に顔をゆがめながら、なぜか俺様は階段を登っていた。
家からさほど遠くない距離に、一体何を祭っているのか古い神社がある。 小さな山(山と呼ぶのもおこがましい)の頂上には赤い鳥居と、とってつけたような賽銭箱が置いてあり、そこへ行く為にはなんとも急な階段を登らなければならない。 今までここの前を通る度に、需要があるのかと自問していたが、どうやらあったらしい。
明日一体何があるのか、例によって突然『言を担ぐ』とか言い出した彼女に連れられて、俺様はしぶしぶ階段を登っていた。
「こんな辺ぴなとこに神様なんていないって」
「うるさい、さっさと登れ」
「つーか神様なんて信じてたわけ?」
20段以上差をつけられて、嫌味すら届かない。 彼女は急な上、一段一段の幅が狭い非常に登りにくい階段を、2段飛ばしにすいすい登る。 家ではあんなにゴロゴロしているくせに、一体どこにあんな体力があるんだと、ひとりごちるが差は開いて行くばかり。 彼女のタイトミニからつき出した長い脚がカモシカのように前後に動くのをぼんやり眺めていた。
タイトミニ? 弾かれたように彼女のスカートをまじまじ見た。
今朝穿いていたスカートは少なくとも膝上5センチ程度だったはずだ。 スカートの長さが変わっている錯覚に陥り反射的に目をこする。 とうとう暑さにやられたかと我が目を疑うが、彼女のスカートの丈は今朝に比べて間違いなくギリギリである。
それもそのはず、階段の高低差とこの急な角度によって、素晴らしい眺めを実現していたのだった。
思わず足が止まった。 彼女はそんな俺様を気にせずズンズン登っていく。
さぁいよいよご開帳かと思われたが、ミニスカートから伸びる生脚はどこまでいっても脚だった。 ギリギリかと思いきやまだまだ太股なのだ。
スカートの中は暗黒の暗闇が支配し、水玉もストライプも色味すら見出だせない。 どれだけ脚が長いんだよと落胆の気持ち半分、 このままギリギリが続いて欲しい気持ち半分。
それ以上登ったら丸見えになっちゃうんじゃないの―――?
別の意味で息切れしそうになっているところで脚が…いや、かすがが突然振り返った。
「何をしている!」
早く来いというニュアンスを含め、声を張り上げる。
「何をしている?」
その後間髪を入れずに、さらに問い掛けた。声色には不信感が露骨に表れる。
「え?ああ、ちょっと鼻血…いや立ち暗みが」
「そんなかがみ込むほどつらいのか?」
「へ?」
完全に無意識だった。 気がつけばバスケットのディフェンスでもするかのように低く身をかがめていたのである。 慌ててしゃんと立って、自分の必死さに薄ら寒くなるとともに苦笑する。 気を取り直し階段を登ろうとしたところで、かすがが言った。
「…スパッツを穿いている」
「え」
「残念だったな」
「………」
スパッツの方がどう考えてもエロいんだけど。
言いかけた言葉をぐっと飲み込んで笑顔を作ると、彼女に追い付くため、4段飛ばしで階段を駈け登った。
「じゃあ見してよ」
「断る」
これ以上何か言うと階段から突き飛ばされかねないので、俺は押し黙った。

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