このテクニシャンめ!

「ねぇ、どうだった?」
耳元で聞こえる男の甘ったるい声色に、今すぐベットのそれはそれは固い部分に自身の頭を思いきり打ち付けたくなるような衝動にかられた。
酒を飲んでいたとはいえ、勢いに流されたとはいえ、こんな奴と関係を持ってしまったことは人生最大の汚点だろう。
とにかくこみ上げる吐き気を抑えられずにベットから飛び起きると素っ裸のまま洗面所に走った。
そんな私を見てベットからは何?つわり?などと私を苛つかせる言葉が飛んで来る。
反論することさえ馬鹿らしい。
鏡で自分の顔を見れば一晩でひどく老け込んだような印象だ。
その辺にあったバスタオルを身体に巻き付けてすべてを水に流すように乱暴に顔を洗った。
「なぁーかすが」
後ろから聞こえる声に顔を上げると、私の後ろに佐助が立っていた。
「なんだ」
鏡越しに睨みつけると佐助はヘラヘラと言う。
「久しぶりだったでしょ」
「……」
本当にこいつは…どうしようもない。
あまりのデリカシーのなさに、私は呆れてわざとらしく溜め息をつく。
「ね、良かった?」
「しつこい!」
まだ下手ならば許せたのかもしれない。
こいつの自信の理由を改めて感じて、通りでと納得してしまうのも吐き気の原因だ。
「かすがったら」
「うるさい!このテクニシャンめ!!」
「あ」
思わず口元に手を当てるが既に遅い。
男は歪んだ笑みを浮かべると私の肩に手を置いて言った。
「ね、もう一回しようか」
私の全身を静かに鳥肌か立っていくのを感じた。

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