気に喰わない ※死ネタ

「じつにあっけなかったねぇ」
口元にうっすらと微笑みを浮かべて、血に濡れた手のひらに目を落とした。
女の血は夕日に照らされてぬらぬらと輝きたった今流れ出たと言わんばかりの鮮血があふれる。
「俺様のこと絶対に殺すって言ってたじゃん」
眼下に横たわる女に軽蔑にも似た眼差しを向ければ、その瞳に光はない。
光は暗闇にのまれて、あっけなく消えてしまった。
「せっかく軽く投げたのにさ」
残念そうにそう漏らして手裏剣を投げるそぶりをする。
腕を大きく振りかぶると右肩がずきりと痛んだ。
「避けろよ、馬鹿」
忍びのくせに修行が足りないんじゃないの?
心の中で反芻して大きく溜め息を吐く。

茜色の優しい光が女の顔を包み込むように照らしてゆく。
なぜかその時の顔がとても満足げに、幸せそうに見えてますますやるせない気分に唇を噛んだ。
本当にアンタは、最初から最後まで俺様の思い通りにならない。
血で濡れた自分の手のひらと、足下でぴくりとも動かない女を見つめながら
どこにこの感情をぶつければ良いのかを懸命に考えていた。

「なんでお前が死ぬんだよ」

足元の女がかすかに笑ったような気がした。

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