時事ネタ(拍手お礼)

『記者会見での総理は
  3年後の消費税引き上げを明言し――、
   2億円規模の給付金などを――――』
テレビ画面の中の無表情なオネーさんが淡々とニュースを読み上げる。
いつものように二人で食卓を囲みながらかすがの眉間の皺がどんどん深く刻まれてゆくのをじっと見つめていた。
「なんだかんだ言って、結局税金を引き上げるのだな」
かすがはさも不満そうにテレビに向かって愚痴をこぼす。
「まー、お偉いさんの考える事は皆同じってわけさ」
俺様はさして興味もなかったので かすがの話を適当に流し目の前の肉じゃがを口いっぱいに頬張った。
(う~ん、うまい。やっぱ俺様って天才かも)
「しかも給付金などと…!」
「いわゆるバラマキだあね」
「独り身には1万5千円、夫婦なら3万、4人家族だと6万、か」
「まさにアメとムチってやつ?」
ほとんど噛み合っていない会話を繰り広げながらかすがは何を思ったのか突然肉じゃがに箸を突き立てた。
「このままでは日本はお先真っ暗だ…!税金を上げるにしたって一人1万5千円とは…!」
乱暴に口の中へじゃがいもを突っ込むと、歯ぎしりでもしかねないくらいに口を動かす。
憤慨するかすがを尻目に俺様は大事な肉じゃがを自分の傍に寄せた。
「俺様にさぁ、すごい良い考えがあるんだけど」
さわやかなの笑みを浮かべたつもりだったが、かすがにはよほど邪な笑顔に見えたのだろう。
眉根を寄せ、まるでうさんくさいものでも見るような表情(カオ)。
「…なんだ。国取りの相談か?」
「違うって。ちょっと耳貸して」
俺様がそう言うとかすがは仕方なさそうに渋々こちらに耳を傾けた。

かすがの傍に近寄ると途端に良い匂いが鼻孔をくすぐる。
シャンプーの香りと石けんの匂いが混じったような甘い匂い。
危うく間違いがおこりそうなくらい良い匂いだ。
(…………。)
不埒な考えが一瞬頭をよぎるが「早くしろ」という苛立たしげな声色にはっと我にかえった。
しょうがなく、はいはいと呟いてかすがの耳元に唇を寄せささやいた。

「俺様と結婚しよーか」

「……誰がだ」

かすがはたっぷりと間をあけてからさも嫌そうな声色で答えた。
耳元から顔離してかすがに目をやればあんまり真顔なので面白くってつい顔が緩む。
「わかってるくせにぃー」
にんまりと笑ってかすがを指差すとかすがはその指先を目で追ってゆくような素振りをしてそのまま後ろを振り向いた。
あまりにベタすぎて笑えるものも笑えない。
「この部屋には俺様とかすがしかいないでしょ」
俺様は苦笑して指差していた手でかすがにでこぴんをした。
「フン、何を馬鹿なことを、だいたいどこが良い考えなんだ」
かすがは額を押さえながらも上ずった声を上げた。

こういうときのかすがはマンザラでもない…と思う。
どこから沸いてくるのかわからない自信を頼りにさらに突き詰めた。
「結婚すれば3万貰えるし一石二鳥でしょ、さらに子供も作れば6万円!」
両手を大きく広げてオーバーにリアクションして見せる。
「俺様、子供は2人がいいなぁ」
「だっ、誰がお前と こ、子づくりなんてするかっ…!そんな事を言っている暇があるなら少しは日本の将来のことを考えろ!」
お前のようなやつがいるから日本はよくならないんだ!
すごい剣幕で言い放つと、かすがは矢のように素早く自室に入っていった。
「死ね!」
扉の向こう側から聞こえる声色にあと2時間は出て来ないな、と悟った。

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