いつか

すらりと伸びた長い手足。整った目鼻立ち。美しい曲線美。
生きる意味を見い出し、よりいっそう輝く月。あの時よりも、お前はずっといい女になった。(出るとこもさらに出たし)
「お前、成長したよなぁ…いろいろと。」
「煩い!見ているんじゃない!」
いーじゃん、減るもんじゃないし。って思ったけどグっと飲み込んだ。
「忍びらしくなったよな、ホントに」
あの時は、忍びというより女の子って感じだったのに。
今じゃすっかりクノイチだ。もう俺様が守る必要もない、か。
「…私は最初から忍びだ」
「甘い忍びもいたもんだねぇ」
「うるさい!」
いつものようなやり取りを繰り返す。この駆け引きが、たまらなく楽しい。
「あのお方のおかげで忍びになれたってやつ?」
一言余計なことを言ってしまうのは、相手がかすがだからだ。
自分でもわかっているくせに、カマをかけたくなる。
肯定されてヘコむのはいつものことなのに。

でもそん時は、違った。

「私はつるぎ。あのお方は私が守る。…つるぎを守るのは何だと思う?」

いつもの調子で『俺様が守る』って答えればいいのに、答えられなかった。

俺とかすがは敵同士。そんな口約束は出来ない。
でも。
もしかすがが望んでいる答えが、『俺様が守る』ことだったら?
そのまま二人で愛の逃避行か?
そんなのはふざけすぎてる。
冗談、キツいって。
「さぁ?」
結局、いつもの調子で返す。
「…フン、私にもわからないのに、お前がわかるわけない。」
かすがは遠い目をして言う。
なんだ、考えてる最中ね。
どうやら、かすがの『答え』はまだ出ていないみたいだ。
「じゃー俺様、立候補しとくよ」
「お前は、変わらないな」
かすがは、吐き捨てるように言う。

なれるもんなら、剣を守るもんになりたいさ。
なぁ、かすが?
頼むから、こっち向いてくれよ。

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