フリーズ

ソファから、首を右に傾ければダイニングテーブルで懸命にノートパソコンに向かっている女がひとり。
暑いのかなんなのか知らないが、Tシャツに短パン(しかももの凄く短いやつ)と言うラフな格好で、こちらが真正面になる位置で椅子に座っている。
どうやら仕事を家に持ち帰ってきたようで、さっきからうんうんと一人唸っていた。
全くせっかくの休みだっていうのに、ご苦労なこって。
特に見るもんもないので、かすがの脚線美をぼーっと見つめていた。
「おい」
「んー?」
「用があるならさっさと言え」
かすがが不機嫌そうにそう言うので、視線を脚から上へと流し見る。
パソコンの後ろから除く顔は、案の定眉間に皺を寄せていた。
「別に用はないよ。なんで?」
「さっきからこっちを見ているだろ」
「いやいや、俺様は女体の神秘のついて考えてただけで「考えるな」
せっかく真顔で答えたのに、かすがはきっぱりとつっぱねるととにかく気になるからやめろとパソコンの影に隠れる。
俺様は「大丈夫、かすが(の顔)を見てるわけじゃないから」とまた視線を脚に戻すと
かなりきわどい短パンの隙間から、パンツでも見れれば儲けモンだなとぼんやり考えていた。

そんな中やっと調子が出て来たのか、静かな室内にキーボードを叩く音が響き始める。
気分まで乗って来たのか鼻歌なんかが聞こえて、かすがは上機嫌なようだ。
としばらくして、かすがが急に脚を組んだ。
「あ!」
あまりのぎりぎり具合に思わず声が出てしまい、かすがは訝しげにこちらを見る。
「…なんだ?」
まさかパンツ見てましたとは言える筈もなく、泳ぐ目を必死に堪えてなんとか言い訳を考える。
「い、今、女体の神秘、わかりかけたんだよね」
「そうか良かったな」
「ね、ちょっとさ、もう一回それやってくんない?」
「それってなんだ」
「脚組むやつ」
増々深くなる眉間の皺に内心冷や汗をかきつつ、笑顔でそう伝えれば、かすがは仕方なくもう一度反対の脚を組み直した。
「…で、何がわかったんだ?」
「うん、今日のパンツの色?」
かすがは真顔のまま固まると、視線を俺様からパソコンに戻して
何事もなかったようにキーボードを叩く。
「…お前のせいでパソコンがフリーズしたじゃないか」
「え、それ俺様のせいなの?」

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