一足早いクリスマスプレゼント

性―――いや、聖なる夜に、クリスマスプレゼントを交換するのは、恋人たちの習わしだと言っても過言ではない。
俺様も二人の仲を盛り上げるためには、努力を惜しまないつもりなわけで。

「ねーぇ?」

「…気色の悪い声を出すな」

「今年のクリスマスプレゼントは何が欲しい?」

意気揚々とかすがに尋ねれば、彼女は迷うことなく即答した。

「スウェット」

「はい?」

「スウェット」

どこの世界に愛しの恋人(厳密には違うけど)からスウェットを欲しがる女がいるだろうか。
俺様のスウェットを形見変わりに欲しいとかそういうことならともかく、聞けばかすがはほとほと嫌そうに、自分の履いているスウェットをパチンと引っ張った。

「…このスウェット、もう駄目だ」

一瞬垣間見えた腹チラを見つめながら、合点がいった。

「ゴムが伸びてしまって、歩く度にずり落ちてくるんだ」

「あー、わかるわかる。俺様のやつもそろそろ買い替え時だよ」

自身のスウェットを引っ張りながらかすがに賛同すると、彼女は忌々しげに舌打ちをする。

「歩きにくいったらないな」

「まぁまぁ、それは明日買いに行くとして、もうちょいロマンチックなやつ…ないの?」

語尾に期待を乗せてそう言えば、かすがはいぶかしげに眉根を寄せる。

「…例えば」

全くもって抑揚のない声で呟くと、かすがはこちらをチラリと見た。
逆に聞かれるとは思ってもみなかったので、思わず返答に詰まってしまった。

「えー、んー……“俺様が欲しい”…とか」

「金をもらってもいらん」

「せっかくならリボンも付けるよ!」

「………」

かすがは煩わしそうな視線をこちらに向けると、小さくため息をついた。
そしてさっと立ちあがると、右手でスウェットの腰あたりを押さえながら、キッチンへ向かって歩き出す。

「あ、お茶?」

「…お前も飲むか?」

「うん」

かすがは細長い指で冷蔵庫からお茶の入った紙パックを取り出すと、長いまつ毛を伏せて2つのグラスにお茶を注ぐ。
そしてグラスを両手に持って、こちらへ帰ってきた。

「逆にお前は何か欲しいものでも―――」

グラスを俺様へ手渡そうと、腕を伸ばしてそこまで言いかけた刹那――、かすがのスウェットは重力とともに床へずり落ちた。

後に残されたるは細い太ももを露わにした黒のパンツ姿のかすが。
みるみるうちに顔が真っ赤になる。

「うは!クリスマスプレゼントにはちょっと気が早いんじゃないの?」

「……だからスウェットが欲しいと言ったんだ」

泣きそうな声で呟いて、グラスを俺様に渡した。

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