ひなまつり

そういえば今日はひなまつりだったな、と机の上にちょこんと置かれた折り紙を見て思い出した。
赤と青、仲睦まじく並べられた折り紙は、人間の――所謂ひな人形の男雛、女雛の――形をしている。
ご丁寧に左右にぼんぼりのようなものまで置いてあり、さらにその手前にはお供え物のようにあられが飾られていた。
佐助がこれを作ったとしたら、なんとも器用な、
………暇な奴だ。
よくよく見ると二つのお雛様には顔まで書かれている。
赤い方には怒ったようなへの字口。青い方はにこにこと笑っている。
「なぜこっちは怒った顔なんだ…?」
ついそう呟けば、背後から当然のようにどーしてでしょーと間の抜けた声がする。
振り向くことすら煩わしい。
私は込み上がる苛立ちを抑えながらなんでだと背後の男に問いかけた。
「へへー、聞きたい?」
「どちらかと言えばどうでもいい」
「実はこれ、赤いのがかすがで青いのが俺様なわけよ」
「……そうか」
「そー」
「………………」
聞くんじゃなかったと、猛烈に後悔した。
似てるでしょ、と得意げに笑う男を尻目にこめかみに手を当てて、大きく溜め息をつくと、机の上のあられを引っ掴んで投げた。
「鬼はーーそと」
「ちょ、かすが!それ違う!」

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