恥ずかしいやつら

『嗚呼、マリアさま、僕はもう、思い残すことはありません…』

金髪の少年が、画面の中で呟くと同時に、金髪の女の涙も最高潮に達していた。
(あーあー、ボロボロ泣いちゃってまぁ)
かすがは目から下をクッションに押し付け、ソファにももたれかからず、テレビ画面を食い入るように見つめている。
もちろん瞳にはたっぷりの涙。
時折、思い出したようにティッシュで目を擦り、鼻をかんだ。
見る前はアニメぐらいじゃ泣かないって自信満々に言ってたくせに、このざまだ。
だから言ったろ、名作だって。俺様だって油断すると危ないっつーの。

でも分かってんのかなぁ、
泣いたら罰ゲームっていったよね、俺様。
『もう、疲れたよ、パトラッシュ…』
罰ゲームのよからぬ妄想で、にやついていたけどテレビ画面の教会のシーンに、つい引き込まれる。
いつも思うけど、何回見てもこのシーンには慣れない。
よく感動の最終回とか言ってやっているのも頷けるってやつだ。
天使に連れられた少年が幸せそうに天に昇っていって、
教会の鐘の音が響き、教会はフレームアウトしていく。
エンドロールが始まっても、しばらく俺様もかすがも動けずにいた。
「…泣いたら罰ゲームって言ったよね、俺」
「そうだったか」
「そうだよ。だいたいアニメなんかじゃ泣かないとか強がってたの誰だっけ」
「うるさい、あれは反則だ…!お前だって何度も鼻をかんだろ」
「あ、あれはただ鼻がつまったんだって」
「その割には目を擦っていたようだが」
「だって、あれはパトラッシュがさぁ」
「…………」
思わず二人で見つめあった。
どうやら俺様も泣いていたのはバレバレだったみたい。(こっそり泣いたつもりだったのに)
「引き分けだな」
まだ少し赤い目をして、かすがが言った。
「みたいね」
そういう自分もティッシュをもう一枚とるとチーンと鼻をかんだ。
二人の鼻をすする音が、静かに部屋の中に響いた。
「…はな、出てるぞ」
「ありがと」

※イラストをカジキさんより頂きました!ホントにありがとうございました!

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