軍神と虎のしのび

「アンタさぁ、ホントにかすがに惚れてるわけ?」
「うつくしきつるぎを、あいさないものなどいないでしょう」
このものは、つるぎのこととなるといっしょうけんめいですね。 わたくしがしんげんにたいするときもこのようなかんじなのでしょうか。 いかにも〝へどがでる〟といったひょうじょうで、 たけだのしのびは わたくしをにらみます。 あぁ、たけだけしきとらのしのびはやはりとらなのですね。
「しのびごときがわたくしのてをつかむか?」
たけだのしのびはおおきなしゅりけんをかまえると、わたくしにむかってきました。 きんぞくおんがあたりにひびき、いのちのやりとりがおこなわれます。
わたくしのけんと、しのびのしゅりけんがぶつかります。 しのびはわたくしをにらみつけて、みみもとでささやきます。
「あいつを解放しろ」
「おまえは、つるぎのなんなのですか?」
わたくしのしつもんにどうようしたのか、しのびはおどろいたひょうじょうで うしろにさがります。そのみのこなしは、じつにすばやい。
「まだ、…ともだち」
しのびは、すこしかんがえてからごびをあげぎみにいいました。 このらんせにともだちなどと。 しのびのひっしさはともだちをおもうものとはすこしちがうようです。
そんなことをかんがえていると、あしもとにしゅりけんがとんできます。
「ボーッとしてると、殺すぜ?軍神さん。忍びをなめるな。」
どうやらほんきになったようです。
「よいでしょう。きなさい。つるぎはわたしませんよ。」
そういうとしのびは、いっしゅんはっとしたひょうじょうになり とてもちいさなこえで、つぶやくようにいいました。
(あんたが死んでも、貰える気がしねーよ)
そのことばをおきみやげに、しのびはすがたをけしました。 しのびのけはいがきえたとどうじに、うしろからつるぎのこえがきこえます。
「謙信様!ご無事ですか!?」
たけだのしのびは、このけはいにきづいたようです。
「わたくしはだいじょうぶです。さきほどまで、おまえのともだちがきていましたよ」
「は?」
つるぎはふしぎそうなかおをしていました。
わたくしには、らいばるがたくさんいるようです。
おまえはつるぎをあいしているのですね。

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