もしもかすががありえないくらいデレデレだったら(罰ゲーム)

「アッー、駄目だって!そんなとこ舐めちゃ!」
会社の書類を自宅に持ち込んで、懸命にエクセルに数値化入力している真っ最中。外野が煩くて私は苛々していた。
慣れない手つきでキーボードを打ち込みながら、エンターキーを叩く音がさっきよりわずかに大きくなる。
「うわ、ヤバい、ヤバいそれはヤバい」
円グラフに棒グラフ、会社の重要な利益を数値化する事は必要不可欠で、重要な仕事なわけなのだが、あと10ページ以上はあるであろう書類の束を目にして大きく溜め息をつくのだった。
「すごい、めっちゃいい、ざらざらしてる!」
「噛んでる、噛んでる!」
「う、」
「うるさいッ!!」
必死に仕事に集中しようと試みているのにこいつは気を使うどころかエスカレートしている。(わざとじゃないだろうか)
どうにも我慢出来ずにそう叫ぶと、佐助は小さく肩を震わせた。
「び、びっくりしたー、ちょっと、大きな声出さないでよね!」
「静かにしてほしいのはこっちだ、お前はいちいち喋るんじゃない!」
だってさぁーと弁解し始める佐助の
肩のあたりからちょこんと小さな獣が顔をのぞかせる。
にぃと小さい声で鳴く白い猫は、昨日私が知り合いから預かってきたものだ。
愛らしい丸い大きな瞳がこちらを見つめているのに気がついて仕事なんかそっちのけで、思わず手を伸ばした。
「おいで」
にゃーとか弱い調子で一声鳴くと、猫はこちらへ慎重に近付いて来る。
まだ警戒しているのだろうか。しかし耳の後ろをわしゃわしゃと撫でると気持ちが良さそうに目を細める。
「可愛いなぁ、お前は」
私の綻んだ顔を見て、佐助がふふふと気色の悪い顔で微笑む。
「何を笑っている」
「え?いやー微笑ましいなぁと思ってね」
「うるさい、見るんじゃない」
「えー!?」
佐助のブーイングを無視して、私は猫を抱き上げた。
子猫だけあってとても軽い。
柔らかくて暖かくて癒しの源泉のようなそれに顔を埋めた。

Since 20080422 koibiyori