楽しい社内恋愛~部下編~2

「すいませんがこの書類に判子もらえます?」
ヘラヘラと締まりのない顔で部下の猿飛は書類を差し出す。
相変わらず何を考えているのかわからない男だ。
私はそれを慎重に受け取ると、上から下まで丁寧に目を走らせ、特に問題もないようなのでその辺にあった自分の判子で所定の位置に捺印した。
「そら、持って行け」
「どーも」
書類を猿飛に返せば、彼はどこからともなくもう一枚紙きれを取り出す。
「ついでっちゃあなんですがこっちにも判子押してもらえます?」
満面の笑みで紙切れをデスクに置く。
「まだあるなら最初から―――」
視界に紙切れを捉えた途端、言葉を失った。

それは普通の紙とは少し違っていて、薄っぺらくて、
例えて言うならトレーシングペーパーのようだった。
しかも誰しもが見たことがある…はずだ。(まぁ実際にお目にかかったのは私も初めてだが)
履歴書のように自分の個人情報を書き込む欄があって、(しかも二つ)
仲睦まじいカップルが足並み揃えて役所に提出するような代物だ。
ご丁寧に私の名前と、猿飛の名前が書かれていて
あとは判を押すだけだ。
「……………」
私はデスクの上に置かれた婚姻届けと佐助を交互に見つめた。
「…お前は一体何がしたいんだ」
「あわよくば結婚したいなー、なんて」

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