アニメ11話(お姫様抱っこ)~OVA13話までの流れ

「で、首尾は?」
「織田信長は安土山にいる―――」
かすがは大きな尻をさすりながらそう言って、やっとのことで立ち上がった。
「全く、忍びのくせに木から落ちるなよな」
「うるさい、お前が、……なんでもない」
「それより、織田の所在がわかったんだ。すぐに伝令出さないと」
「わかっている!」
名誉を挽回するべく鼻息荒くまくしたて、今すぐにでもどこかへ突進しそうな彼女を一瞥すると、じゃあお前は瀬戸内に行けと促した。
「瀬戸内?」
「そー。今前田んとこの風来坊も向かってるみたいだし」
「わ、私は謙信様に―――」
「今そっちに行ったってしょうがないだろ?優先すべきはうちの旦那と伊達軍、瀬戸内だ」
旦那の方には俺が行って、ついでにお前の主にも伝えてやるからと宥めるが、未だ彼女は不服そうだった。
「頼むよ。俺様一生のお願い」
「気持ちが悪い真似はよせ」
おどけてみせる俺様に眉間を深く寄せたまま、かすがは大きく溜息を吐く。そして、しぶしぶわかったと小さく頷いた。
「よろしく頼むよ」
「だが、瀬戸内に行くには私の足でも最低3日はかかるぞ?」
「そんなに悠長にやってる暇はないって」
「そんなこと言ったって…どうするんだ?」
「ほら、これ」
そう言って笑顔で懐から小さな笛のようなものを取り出してみせる。
「こ、これは―――」
「そう、さっきかすがが乗って来たやつよ」
あと3つはあるから持ってきなと笑顔で手渡せば、彼女は引きつった顔で呟いた。
「まさかこれに乗れというのか…?」
「ぴんぽーん。これならまぁ一日…半ぐらいで行くんじゃない?」
「お、お前はこれに乗ったことがあるのか?」
「ん?俺様はないよ」
和やかに言う俺様に、かすがは目を見張るようにしてワナワナと震えだす。
「… 次に会った時は命の心配をしておけ」
きつく睨みつける彼女に“はいはい”と苦笑して、じゃあ俺様行くからねと手をひらひらさせれば彼女はさっさと行けと踵を返してしまう。
肩で怒るかすがを目で見送って、木々の間を駆け出した辺りで後方から小さな悲鳴が聞こえてきたもんだから、ついつい口元が緩む。

忍びのくせになんちゅー声出すんだと笑ったところで、お仕事お仕事と頭の中を空っぽにした。

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