11月22日

こたつに肘をついて、ぼんやりとテレビを見る。見てなんかいなかったが何も考えたくなかった。
「ねーかすが、今日はいい夫婦の日なんだって!知ってた?」
デリカシーのない男は何が嬉しいのか夕飯の準備をしながら満面の笑みで言う。
「いい夫婦の日か…」
「どったの?」
私の異変に気づいたのか、佐助は覗き込むようにこちらを見る。非常に煩わしいが、こいつから逃れる術はない。私は大きく溜め息をついて口火を切った。
「謙信様がな」
あのお方の名前を出しただけで胸の奥が熱くなる。
「あのお方の左手の薬指に指輪が―――」
最後の方は声にならなかった。佐助は痛々しそうに私を見る。
「今日が結婚記念日なんだと嬉しそうに笑っていた」
「…そうなの」
佐助は私から視線を反らすとおもむろに左手を差し出した。ちゃっかりと私の手を握る。
「なんだ」
「あのさぁ」
照れくさそうに私を捉えると右手で薬指を指し示す。
「俺様の薬指は、かすがのために開けてあるから、さ」
「佐助…」
私のためにそこまで――――――私は佐助の心遣いに胸がキュンと


するわけがなかった。
「早くその薬指がうまる日が来るといいな」
「かすが、ちょっとそれひどくない?」

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